一口に鹿児島弁と呼ばれてはいますが、実は、本土だけでも四言語あると言われています。薩摩半島で二つ、大隅半島で二つ。諸島部は島毎に全て言葉が異なり、よそ者が入ってくると一発でわかるようになっています。しかも、言語は複雑難解。何で一つの藩内でこんなに言葉を複雑化したのか。唐芋(さつまいも)を県外に出さないためとか、密貿易で稼ぎまくっていたのがばれないようにとか、理由については諸説あります。
ここでご紹介するのは私が九年ほど住んでいた大隅半島肝属郡の鹿児島弁がメインとなります。テレビの大河ドラマで使用されている鹿児島弁とは異なる部分もあるので、そこを面白いなと思って頂けると嬉しいです。良かったら日常会話でちょこっと使ってみて下さい。最近は標準語に毒されてきてだんだん使われなくなりつつありますが、方言は大切な大切な文化ですから一語でも多く残ることを希望します。もっとも、鹿児島に引っ越してもまなくの頃は、地元の方が標準語を話していても、イントネーションが鹿児島弁のため、標準語だってことになかなか気がつかなかったりしましたが・・・(汗)。
なお、身の回りで使われて耳に入ってきたのをそのまんま表記しているため、正確性では一歩落ちると思いますがよろしく御願いします。
もったいないよ、まだ使えるよの意味。古文をまじめに勉強していた方ならおなじみだと思います。漢字で書いたら「新しか!」でしょうか。お菓子をぽとりと落とした時などに祖母からよく言われました。
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あまめ ・・・ 台所に出てくる黒光りする大きな、ああ、口に出したくない ><q
昆虫です。アレです。害虫です。鹿児島ではどうしてこんな雅な名前がついているんでしょう。この言葉は、飲食店の方にお勧め。お客さんにばれずにアレの話ができますよ。
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お酢のことですが、黒酢も、一般で言うところのお酢も全部あまんと言っていました。あまと短く聞こえることもあります。海女のことではありません。一応。
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いけんすっか。いけんすっが。など、微妙に違う言い回しあり。語尾の始末の仕方に個性が光る?
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東京生まれの私には「いしちゃ」と聞こえていました。男性が言っているのは記憶にありません。もしかしたら女の子言葉なのかも。突発的な出来事に対して瞬間的に口から出てくる感嘆語。
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いっとはちょっとの意。漢字で書くとたぶん一時(いっとき)。
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知らずにこれをいきなり聞くと混乱するかも。待ち合わせ場所の行き違いが起こりそう。鹿児島では、行くことを来ると言うのです。私と友人の実会話をどうぞ(私の家で遊ぶ約束をしていたが、友人が時間になっても来ないので電話してみた時の話)。:東京人「ん−、何か時間なのに来ないからどうしたかと心配して。」→鹿児島人「ごめ−ん。今から来るからね−。」→東京人「えっ?!私が行くんだったの?(集合場所間違えた?)」→「うんにゃ。私が来るから。」→東京人「・・・?」
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んにゃ、うな、んなと聞こえることがあるのはヒアリングに問題があるから?これはわかりやすい鹿児島弁ですね。
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関西では貴方を意味するけれど、鹿児島では自分のこと。ちなみに相手のことはわいと呼ぶ。本当に関西とは逆。鹿児島人と関西人で会話すると混乱するかも。男言葉なので女性は使わないように。
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何だか京言葉みたいな言い回し。鹿児島出身者でも聞いたことがないと言われることがあるので、かなり狭い地域で使用されていた言葉なのかも。
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木綿豆腐とか絹ごし豆腐とかの区別なしに使われる。でも、最近は「絹ごし」、「木綿」、「豆腐」などと使われることが多くなってきました。
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若い女性を言います。しかも、ちょっとした良家の娘さんを指す。微妙なお年頃のお姉さん方に言ってあげると喜ばれるかな。
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男衆(おとこんし)、女衆(おなごんし) ・・・ 男性、女性の複数形
単純には男性陣、女性陣と訳しても?わかりやすい鹿児島弁。
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今の子は普通にお疲れ様と言いますね。あとどのくらいの世代まで通じるのだろうか。
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否定命令形はおらぶんな。意味訳すると騒ぐなということ。
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おんじょ ・・・ お年寄り、使い物にならないツワ(ツワブキ)
お年寄りを意味する単語としては、今の子はめったに使わない。どちらかというと、食用に向かないツワのことを言うことが多いような?ツワを採りに山に行くのですが、採るのは葉っぱが小さくて、細い茎に毛の生えた、丈の短い若いツワだけ。毛が取れてつるつるになったツワはおんじょと呼ばれ、スルーされる。この場合のニュアンスとしては、お年寄りではなくて、役立たずを意味するような雰囲気がある。
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正式には「唐芋(からいも)」だが、そう発音する人はほぼいない。県外人にとっては薩摩から来た芋だからさつまいもだが、鹿児島県民にとっては中国から来た芋なので唐芋と呼んでいる。ちなみに孟宗竹は唐竹と呼ぶ。鹿児島の唐竹は本気で太くて巨大。そうめん流しにはぴったりの逸材。また、あまりにも難解な鹿児島弁を揶揄して唐芋標準語と呼ぶこともある。
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蚊に刺されてかゆいかゆいと引っ掻く動作。「かかじんな(かいちゃ駄目)。」などと使う。
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茨科の植物。郷土銘菓のかからんだんごは、柏餅を作る際に鹿児島には柏がなかったことから用いられるようになったという説がある。直訳は「関わらない」だが、これは山に入るとからまって大変な事になるので関わらないようにしなさいというのが語源らしい。ちなみに正式名称のサルトリイバラも猿が捕獲されるほどの茨から来ているようだが、実際に引っかかるのは人間ばかりなり。
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きばらんね(もっと頑張らないか)という言い回しもある。終止形は「きばる」だが、バリエーションは多い。
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男性は「めしくいけこ(ご飯食べに行こう)。」などと使う。「食わんね(食べなさい)。」程度なら女性でも使うことがある。しかし、女性の場合は「たもる(食べる)。」と発音することが多い。「食もらんね(食べなさい)。」など。ただ、これは男性でも使用することがあるので、「食う」が普段用で、「食もる」は丁寧語なのかもしれない。もしかしたら「食もる」=「食べ申す」かも。直感的には地域差が大きそうな単語であるような気がする。
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主に女性が使う。「ぐらしかこっ(可哀相なことだ)。」などのバリエーションがあるが、たいていは「ぐらしか」単品で使用されることが多い。
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標準語と行くと来るか逆なんで注意。「今から来るからね(今から行くからね)」は、相手がこちらに来るということ。慣れるまで混乱するかも。
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ひくを語頭に着けて「ひっけしむ」と使うこともあるが、意味は変わらない。けんかになった場合、「けしめ(死ね)」とののしったりするのは他の県民と変わらない。
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昔は櫛削るって表現があった(?)くらいだから不自然ではないと思うが、初めて聞いた時は驚くかも。髪を解くだけなのに、何故かすり減るような不思議な感覚を受けるのは標準語育ちだから?
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ほぼ女性言葉。特に女子中学生が連発する様は、まるで恥ずかしがることが女のたしなみの全てであるかの様。その取り憑かれたような必死さに、県外の方はとまどうかも。
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なぜ芋が略されて呼ばれるようになったか不明。意外かも知れないけれど鹿児島県民はサツマイモだけでなくジャガイモも里芋も山芋もよく食べる。ちなみにカルビーのポテトチップス工場が県内にある。
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そうだね、とか主に同意する時に使う。単品で使うことは少なく、大抵はじゃっどじゃっどと二度重ねる。人によってはじゃいがじゃいがって言うことも。
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直訳すると西郷さん。鹿児島県の英雄。年配の方と話す時は、西郷さんを呼び捨て禁止。ちゃんど”どん”(標準語に訳すと”さん”)をつけないと半殺しにされるかも?
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鹿児島では茹でて食べるのが一般的。だっきしょと言えば茹で落花生のことを差していると思ってほぼ間違いない。秋のおやつ。
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ここで言う団子はサツマイモ澱粉で作ったもの。すまし汁にするか、味噌汁にするかは家によってそれぞれ。
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鹿児島弁に限らず他県でもよく使われる言葉ではあるが、鹿児島ではさらに強調語の「ひく」を追加して「ひったまがったー」と使われることが多い。
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かったるいとかの怠惰な疲労感ではなく、文字通りのくたびれた。決してヤンキー用語ではない。「だりか」といった使い方もある。
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「そら、行け」って意味だと紹介されることが多いが、個人的には「どりゃー」とか「うおー」とかのかけ声として訳した方が実態に沿っているような気がする。昔のドラマで「ちぇすとー!」と斬りかかるシーン(アドリブ?)が流れたのが原因で、鹿児島武士はそう叫ぶものと誤解されているが、実際の戦場ではやはり「うおー」とか叫んでいたらしい。ただ、最近はその誤解を逆手に取って、ちぇすとと叫んでいたことにして広報に使っちゃえみたいな雰囲気はある。・・・ああ、なるほど、「そら行け」は本来の使い方だったのかもなあ。かけ声として訳す自分の方がむしろ毒されてるかも。
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武士は刀を二本差していることから。両は中国語で二を意味するので、密貿易の相手であった中国の影響を受けているのかも。ただ、これには貧乏侍が刀を一本しか差していないのを馬鹿にして「やーい、ぢゃんぼう!」と皮肉を込めて言う裏の意味がある。人口の25%が士族だった鹿児島では、むしろ裏の意味の方が主だったかも。
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鹿児島は大根の名産地。全国的知名度はほぼ0だけど、鹿児島産の大根のお味は絶品。特に漬け物は激ウマ。桜島大根も普通にでこんと呼ばれるので、どっちのことかはTPOで判断。
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鹿児島人が非常に連発する。じゃっどじゃっどの丁寧語ってことで。
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かったるいな〜という雰囲気で使われることが多い。若者以外はあまり使わないような・・・。
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何故というよりは、どうしての方がニュアンスが近いかと。使用例:「ないごてそげんなったとね(どうしてそんな風になったんだ)。」
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何事か聞き返す場合の他に、感嘆として使用される点では標準語と使用方法は同一。「なんちね」とも。
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これに”良か”がついて「よかにせ」になると、美男子を示す。
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決して平手打ちのことではない。「びんたわりか(頭が悪い)」、「びんたをけずる(髪を解かす)」など、前後で頭のことか髪のことかは見分けるしかない。
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語感からは太い物(体積や容量)を示す印象を受けるが、実際には寸法が大きいことを言う。まあ、大きい物は大抵、体積もそれなりだったりはするけれど。標準語よりも、でっかい感じは伝わりそう。
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灰も蠅もおならも全部”へ”なので、その時の話題で判断するしかない。ただ、活火山・桜島がある立地上、本土では大抵桜島の火山灰のことを言っていることが多いとは思う。
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本来は単純に勇敢であることを示す単語であったはずが、勇敢すぎて無謀な人に皮肉を込めて「勇敢だね!」と言う裏の意味の方が主体になりつつある。というか、もうなってる。
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可愛い物は愛される。決して女性用語ではない。男性が女性に向かってほめ言葉として使うことも多い。
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鹿児島県民は非常にこの単語を多用する。「ゆくさおじゃったもした(ようこそおいでくださいました)」、「たもる(食べ申す=食べる)」など、あらゆる動詞にくっつける。
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もう立ち行かないの駄目、いけないこと等、若干の幅がある使われ方をする。
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これを鹿児島弁にカウントするか迷うところではあるが、他県ではあまり言わないようなので・・・。元々は商品名だったのが、いつの間にか、別メーカーだろうが何だろうが黒板消しをそう呼ぶように。
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「わっぜかこっ(大変な事だ)」と、他の単語と組み合わせる場合もあれば、「わっぜえ(すごい)」と単品で使うことも。
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鹿児島ではしりとりが成立しない?何と”ん”で始まる言葉あり。直訳は「それは知らなかった。」だが、その意味で使われることはあまりなさそう。普段から驚いた時などに、感嘆語として多用される。
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