はんず茶は、はんずを斜めに傾けて土かまどに置き、その中に茶葉を入れ、木の枝でかき回して炒ったものです。その間には揉み工程や撚り工程があります。投入する茶葉の量、熱加減、煎り時間、もみ具合などの調整は経験によるしかなく、熟練までには長い時間を必要とします。元々は松元町の各家庭で作られていた家庭の味でした。
最近では膨大な手間のためか生産販売している農家は一件もなくなっていましたが、今回、知覧の生産農家の方のご尽力で、弊店のために特別に作っていただけることになりました。関係者の皆様には本当に感謝してもしきれません。
はんず茶作りは、まず茶葉の選定から始まります。はんず茶にふさわしい質の良い新芽だけを選んで手摘みで収穫された葉は時間をかけて丁寧に加工されます。加工が大変に難しい上に茶葉も選ぶため、年間を通しての安定供給はまずできません。一度入荷したら次は来年を待たなければならない可能性すらあります。今、はんず茶を提供しているのは世界でもうちだけです。
味には癖があり、夢中ではまってしまう方と、苦手な方にばっくり分かれると思います。釜炒り茶なので香ばしさが真っ先に感じられます。最初に飲んだ印象では、表側にご飯のおこげのような香ばしさ、裏面に発酵臭のような香りでしょうか(発酵臭のような香りがするだけで、発酵はしていません)。お茶の世界の珍味といったところ。一回目ではそのおいしさはなかなかわかりません。何度か飲んでいるうちに濃厚な旨みと香ばしさとの絶妙なバランスにうなるようになります。上級者向けのお茶です。
関係者の方々のご好意で復活することになったはんず茶。市町村合併により消えてしまった小さな町に愛をこめて、「松元はんず茶」と名づけました。いつか、伝統の継承と共にこの町の名が蘇らんことを。
水色
短評
一煎目
黄金色
透明色。焦げのような強い香ばしさ。酸味とかすかに発酵臭。
二煎目
黄金色
丸い香ばしさ。
三煎目
黄金色
うっすらとほろ苦。